大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岡山簡易裁判所 昭和43年(ろ)10号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕五、そこで本件衝突事故における被告人の過失の有無について判断する。

被告人は普通貨物自動車を運転し国道五三号線を津山方向から岡山方面に向け、進行し御津郡建部町大字吉田一、三四八番地先附近において道路南側沿いにある旭川ドライブイン建設工事現場(現在完成)に這入るため道路中央線左側を右折の合図をしながら中央線に寄りつつ時速三五キロメートル位で東進し右折し始めたのであるからその後方にある車両は被告人の自動車の進路を妨げてはならないのである。(道路交通法第二五条第二項、第三四条第五項)

またこのような状態にある被告人の自動車を追越し、もしくは追抜こうとする車両は被告人の自動車の速度進路等に応じてできるだけ安全な速度と方法で進行しなければならない(道路交通法第二八条三項)のである。

ところで被害者河本清は被告人が右折すべくその合図をし、減速して中央線に寄つて進行し始めた当時はその後方約五〇メートル位で先行する服部修運転の車両を追越すため中央線の右に出て一時竝進の状態になつたのであるから被告人の動向、殊に被告人が右折しようとしていることを十分認識し得たはずである。

したがつて河本清としては前記法規に従い速度を落し道路中央線の左側に移行し被告人の右折を待つて進行しなければならなかつたものといわなければならない。

しかも河本清はこのような行動に出るための距離は十分にあつた(服部修の証言参照)ものと認められるにも拘らず時速六〇キロメートルを優に超える七〇キロメートル近くの高速度で既に右折しようとして中央線を右に進出している被告人の自動車を無視して中央線の右側を直進しこれと衝突したものであつて全く交通法規を無視した暴走という外なく、これが本件事故の主たる原因になつていることは明らかである。

見方によれば若し被告人が右折を開始する直前に十分に右後方に注意して安全を確認しておりさえすれば河本清の運転する自動車が中央線を越えて右側部分を超スピードで直進して来るのが発見できたはずであつて衝突を避けるため一時右折を中止するなどして本件事故を防止し得たであろうと考えられないでもないが、およそ自動車を運転する者は互に他の運転者が交通法規に従つて適切な行動に出るであろうことを信頼して運転すべきものであつて、本件被告人のように、中央線の左側からバックミラーで後方の安全を確めて右折の合図をしながら徐々に中央線に寄り右折を始めようとする運転者としては後方から来る他の車両の運転者が交通法規を守つて速度を減じ、自車の右折するを待つて進行する等安全な速度と方法で進行するであろうことを信頼して運転すれば足り、しかも本件事故現場が多数の車両が通行する国道五三号線であることをも考慮すると、河本清のようにあえて交通法規に違反し、前車の動向を無視し高速度で中央線を右に越えて進行する車両のあり得ることまで予想して右折開始直前に右後方に対する安全を確認し、もつて事故の発生を未然に防止すべき注意義務はないものと解するのが相当である。(昭和四二年一〇月一三日最高裁第二小法廷判決参照)

(大森強)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!